20180214:BIGMAMA

※ツアー初日のためセットリストなど詳細については触れませんが、知りたくない人は読まないでください

 

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BIGMAMA 『TRANSIT MAMA TOUR 2018』恵比寿LIQUIDROOM

 

武道館で演奏しなかった曲が中心になるとアナウンスされたこのツアー。

1曲目から悲鳴にも叫びにも似た歓声があがり、フロアではモッシュダイブの嵐。しかし手拍子もお客さんの歌声も求めないし煽りもしない。今までならお客さんにマイクを向けていたところも、まるで歌わせないかのように自分で歌う。笑わないし曲が終わったあとのありがとうも言わない。フロアの盛り上がりが異常に感じるほどだった。

多幸感とか一体感ではなく、孤独さのようなものを感じた。なんて孤独なライブなんだろう。お客さんじゃない、ただただ曲に向き合っている。これまでのBIGMAMAのライヴとは明らかに雰囲気が違った。

でもそれが悪く働いているかというとそうではなく、突き刺さるようにかっこいい。演奏される曲も気持ちが高ぶるのを抑えられないようなものばかりだ。かっこいいのに、それでも心の奥が掴まれるように苦しかった。

 


MCなしでひたすら曲が続き、終盤に差し掛かったところでようやく1回目のMCで金井さんが話し始めた(結局MCはこの長めの1度だけだった)。心なしか表情が固いようにも感じたが、それでも金井さんの言葉を直接聞けたことで会場の雰囲気が少し穏やかになったようだった。私自身ものすごく安心してしまった。

MCが終わりその後披露された曲から明らかに会場の空気が変わった。ステージ上とフロアとがようやく繋がったように感じた。メンバー(又は金井さん)自身も、歌いまくるぐちゃぐちゃのフロアを求めていなかったのではないことがわかったので、暴れるフロアとの温度差もあまり感じなくなった(温度差を感じていたのは私だけだったかもしれないが)。

 

BIGMAMAの音楽には嘘がない。

これは私が武道館公演後に感じたことだが、今回でよりそれを見せつけられた気がした。でないとこんなにもドロドロした本音の出るような歌を歌えない。幸せな夢のような瞬間も、真っ直ぐな愛の言葉も、すべてがめんどくさくてどうでもいいと思うことも、人間の内面にある醜さが見え隠れするようなことも表現できるのがBIGMAMAの音楽だ。直接的になりすぎないようにポップにしたり、壮大な世界観で馴染ませているのもむしろ人間らしい。


私がBIGMAMAを見始めた頃以降は笑顔でみんなに幸せを振りまくようなライヴをしていて、それがBIGMAMAの魅力だった。しかし昔のライヴ映像にあったような笑わない、煽りも歌わせもしない自分勝手とすら感じるようなライヴがBIGMAMAの本来のスタイルなのかもしれない。武道館公演を経てBIGMAMAの中で何かが変わり、それが戻ってきているのではないかと感じた。

でもそれでライヴが悪くなったとは全く思わない。前よりも毒々しさを全面に出すようになり、より日常の汚い部分を彼らにしかできない表現で歌にしている。そしてそれがBIGMAMAの魅力を引き立てている。

 

 

"言葉は確かなものじゃ無い

全て嘘でも構わない
それでも僕ら約束をしようよ"

(「CRYSTAL CLEAR」)


たとえMCで話したことが全て本心でなかったとしてもいい。彼らの本心は全部曲にある。それでも言葉を求めてしまう。それが嘘でもいいから聞きたいと思う。そのうえでBIGMAMAの曲を信じたい。

最後に「行ってきます」と言ってステージを降りていった。アンコールはなし。それでもよかった。彼らを信じて今日ここに来たのは間違いじゃなかったと思えた。


武道館で演奏されなかった恨みを持つ曲たちはまだまだたくさんいる。これからのツアーでBIGMAMAがどうなっていくのか楽しみなツアー初日だった。